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地方公務員OBが語る!意外と知らない?役所の「随意契約」とは?

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こんにちは、およちゃんです。
今日は、地方公務員が必ず使う概念、随意契約について掘り下げてみようかと思います。

1 契約締結の種類

 まずは、地方公共団体で行う契約の種類についてお話しします。契約の種類は、4種類あります。

 一般競争入札は、入札によって一番有利な条件を提示した者と契約を締結する方法です。一般的に入札というと、一番安い価格で応札した者が落札者となるイメージですが、高額な物品等の案件になると総合評価方式が採用される場合があります。これは、価格だけでなく、品質や技術力等を評価し、総合的に落札者を判断する入札方式です。一般競争入札地方公共団体の契約方法の大原則となるものです。しかし、手続きが煩雑であったりすることから、他の契約方法も認められています。それらは後述します。

 指名競争入札は、一般競争入札の限定版のようなもので、予め地方公共団体が指名した者しか入札に参加することが出来ません。これによって、全く知らない業者や不誠実な業者を排除することができるものの、談合などが起こりやすくなってしまうというデメリットを抱えています。指名競争入札による案件は、地方自治法施行令で定める所定の場合に限られます。

 次に、今回取り上げる随意契約ですが、これは競争入札によらないで、業者との見積もり合わせにより、契約相手方を決定し、契約を締結する方法です。見積聴取という形で企業数社から見積書を取り寄せるパターンや、プロポーザル方式で企業等に内容提案をさせ、評価したうえで相手方を決定するやり方もあります。随意契約は、手続きが簡易で分かりやすいですが、公正性に欠ける部分があるので、運用(特に高額の案件)には注意が必要です。

 最後に、せり売りですが、各者に口頭で競争させて、最も有利な条件を提示した者と契約を締結するものです。動産の売り払いがせり売りに適しているとされています。

2 随意契約の種類

 地方自治法施行令に、随意契約できるものについて定めがあります。

elaws.e-gov.go.jp

(1)予定価格が一定以下のもの

 地方自治法施行令は、以下のとおりです。

売買、貸借、請負その他の契約でその予定価格(中略)が別表第五上欄に掲げる契約の種類に応じ同表下欄に定める額の範囲内において普通地方公共団体の規則で定める額を超えないものをするとき。

地方自治法施行令第167条の2第1項

 とあります。この定める額というのは、以下のとおりです。

  1. 工事または製造の請負 250万円
  2. 財産の買入れ 160万円
  3. 物件の借入れ 80万円
  4. 財産の売払い 50万円
  5. 物件の貸付け 30万円
  6. 前各号に掲げる以外のもの 100万円

となります。端的に言うと、少額の契約であれば、随意契約によることができますよ、という規定になります。

(2)性質または目的が競争入札に適しないもの

 競争入札によらず、随意契約とすべき手続きが存在します。それらは随意契約としましょう、というのがこの項目です。政令には、

不動産の買入れ又は借入れ、普通地方公共団体が必要とする物品の製造、修理、加工又は納入に使用させるため必要な物品の売払いその他の契約でその性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき。

地方自治法施行令第167条の2第2項

 具体的に言うと、

  • 法令等で契約の相手方が決まっているもの
  • 相手方の選定余地がないもの

などが挙げられます。競争入札として、想定外の業者と契約してしまったり、仕様を決めて競争入札にかけたところで、特殊な技術のため、1者しか応札が見込めないものであったりする場合は、この理由から随意契約することが可能です。

(3)緊急の必要により競争入札に付することができないとき

 災害等の客観的理由で緊急性がある場合に随意契約することができます。競争入札を実施すると時間がかかりすぎてしまうことがあります。

(4)競争入札に付することが不利と認められるとき

 工事を施工しているときに、想定外に他の工事が必要となった場合、同一業者に施工させることが有利な場合があります。その場合は、競争入札によらず、随意契約で相手方を決定します。

(5)その他

 地方自治法施行令第167条の2には、他にも、時価に比して著しく有利な価格で契約することが出来る見込のあるとき、競争入札に付し入札者がないとき、又は再度の入札に付し落札者がないとき、落札者が契約を締結しないとき、など定められています。

 特に競争入札に付し入札者がないとき、又は再度の入札に付し落札者がないとき、は工事等の入札で不落随契と呼ばれることもあります。不落随契を行うときは、最初の入札に付するときに定めた予定価格やその他の条件を変更することはできません。

3 細かい内容

 政令で定めること以外にも、地方公共団体で定める規則や通知文等随意契約を実施するにあたって細かい内容が定められています。政令だけでは決められない部分、例えば、見積聴取の相手方の数の指定であるとか、伺いを立てる際に必要となる条件とか、実運用上大切となるものは、地方公共団体の規則を見る必要があります。内容は、ベースは同じですが、地方公共団体によって様々です。

4 さいごに

 現在地方公務員として働いている方にとっては、基本的事項の復習になってしまうかもしれませんが、これから地方公務員を目指そうとされている方については、少しでもこの記事を参考にしていただけると幸いです。