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【公務員OB】霞が関官僚の紙業務・サービス残業横行のニュースを見て一考察

 こんにちは。およちゃんです。
 今日はニュース記事から私の所感を書いていこうと思います。

 今日は、Yahoo!ニュース(2021年2月10日付け)に掲載されていた、ITmedia ビジネスオンラインの『「テレワーク7割」どころか、紙業務・サービス残業が横行の霞が関官僚(後略)』について、です。

 

news.yahoo.co.jp

 

 

1 ニュース概要

 ニュース概要は以下のとおり。

 霞が関官僚のブラックな働き方について、当該記事では述べられています。記事によりますと、官僚の約4割が単月100時間もの残業を行っているとのことで、建前上、超過勤務が単月100時間を超えたものはいないことになっていますが、それはあくまで上司の命令による残業時間であるため、いわゆるサービス残業の時間はこの時間には含まれていないということです。河野行政改革担当大臣も記者会見で「霞が関のブラックなところを是正しないと人材が集まらない」と危機意識を表明しておられ、霞が関の働き方改善は急務でありました。

 その原因は様々のようですが、主に国会対応が原因とのことです。質問が出そろうまでの待機、その後の答弁作成などに時間が費やされるといいます。また、官僚は対面ベース、紙ベースの仕事が多いようで、IT化が進んでいないとのこと。

 そんな状況を打破しようと、国会の質問取りを改善したり、2021年度予算編成では、42年ぶりの国家公務員の定員増加があるとのことで、今後の霞が関働き方改革に注目が集まります。

2 地方公務員はどうか

 霞が関官僚のブラックな事情が大変よく伝わってきますが、地方公務員についてはどうでしょうか。

 地方公務員は、霞が関官僚ほどのブラックさは無いように思います。公表されている資料を読み漁っていると、地方では平均して20時間程度/月の時間外勤務となるといいます。また、東京都の毎月勤労統計調査(令和2年11月分)【図1】によりますと、民間企業ではコロナ禍の影響からか、残業時間は前年同月と比べて減っているものの、30人以上の事業所では残業時間は12時間程度との調査結果が出ています。

【図1】

令和2年11月分_東京都_毎月勤労統計調査

出典:令和2年11月分_東京都_毎月勤労統計調査

 霞が関官僚と比較すると、数字上では地方公務員の方が残業時間が少ないように思われますが、議会対応や紙ベースでの業務については、霞が関官僚と同じであり、残業時間が少ないに越したことは無いので、地方公務員の働き方の改善も急務であると言えます。

3 デジタルトランスフォーメーション(DX)

 先の内容に関連して、最近、国レベルで話題になっているワードが「デジタルトランスフォーメーション(DX)」です。

(1)DXとは

 この定義について、経済産業省では、

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること

令和元年7月 経済産業省『「DX推進指標」とそのガイダンス』より

 と、定義づけています。DXは単なるデジタル化、業務システムの導入ではなく、社会をデジタル技術で変革する取組のことを言います。

(2)メリット

 DXのメリットは主に以下のとおりです。

  • 業務効率の向上
  • 事務の簡略化

 あくまで一部ですが、これらは地方公務員にとって大きなメリットとなるかと思います。地方公務員の人員については、財政状況の悪化から、昔と比べて人員削減されているところが多いようです(次年度はコロナ禍もあり、定員増となる自治体もあるようですが)。

 DXが進まないと、既存のシステムに頼った業務で固定化されてしまい、新しい時代への業務転換がスムーズにいかず、ずっと古い体質のままになってしまいます。また、古いシステムを使い続けていると、システムの不具合等でデータの喪失などの突発的事象が起こり、思わぬ損失を招くかもしれません。そうした事態を避けるためにも、国がDXを呼び掛けているまさに今が、その転換期に来ているのだと思います。

(3)DXの好事例

 地方公共団体では、今まさにDXに取り組もうと頑張っていますが、民間レベルでは、既にDXに取り組んでいる企業はたくさんあります。しかも一部の企業では大いに成果が上がっています。

 一事例として、日本マクドナルドホールディングスの取組を挙げます。2月9日にマクドナルドが発表した2020年12月期連結決算によると、営業利益が9年ぶりに過去最高を更新したとのことです。新型コロナの流行に伴い、持ち帰りや宅配の売り上げが伸びたようで、モバイルオーダー【図2】などの取組が業績を押し上げたとのことです。

【図2】

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マクドナルドHPより(https://www.mcdonalds.co.jp/shop/mobileorder/

 マクドナルドのアプリを見ていると、商品の受け取りについて、カウンターでの受け取りだけでなく、カウンターで注文せず、座席で注文すれば座席まで持ってきてもらえるようになっていたり、ドライブスルーをしなくても駐車場でスマホを使って注文すれば、車まで商品を持ってきてくれたりと、今までの注文形式とはかなり変わってきています。実際、私もマクドナルドをよく利用するのですが、この注文方式はとても便利だと思いますし、コロナ禍で人との接触を控えている人にとっても大きなメリットがあると考えています。まさしくDXの好事例と言えるのではないでしょうか。

 また、企業間の取組で言うと、まだ全国に浸透していない取組になるかもしれませんが、電子契約の取組が挙げられます。いままで契約書というと、当然のように、書面で、契約当事者間で押印し、収入印紙を貼付して作成していました。

電子契約とは、契約のなかで、合意成立の手段として、インターネットや専用回線などの通信回線による情報交換を用い、かつ合意成立の証拠として、電子署名やタイムスタンプを付与した電子ファイルを利用するものをいう

ウィキペディア「電子契約」(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%BB%E5%AD%90%E5%A5%91%E7%B4%84

 上のウィキペディアの記事にあるように、押印も電子で行い、文書もデータで作成するというものです。今までにない手法で戸惑ってしまいますが、これが全国で浸透すれば、ペーパーレス化が促進され、不必要な事務(契約書の製本、押印作業など)が減ることになるでしょう。

(4)まずはDXを進めてみよう

 こうした好事例から、DXを進めるとメリットが多くあることが分かるかと思います。地方公共団体でもDXの取組が進めば、住民サービスの向上が見込めますし、何より職員の事務効率や働く意欲の向上につながり、ひいては時間外勤務の削減につながる、紙業務が減るものと考えています。

 地方公共団体の中でDXを推進し、業務効率化を図り、時間外勤務縮減に努めてほしい、ということを私は地方公共団体に物申したいです。

4 課題

 一方で課題となるのが、いまだに根強い庁内の縦割りの関係です。どの自治体でもそうですが、部局の縦割りは強く、「これはあっちの部署の担当だから」とか「これはあっちの部署に必ず筋を通しておかないといけない」など、ややこしい関係がたくさんあります。これらを横断的に取りまとめる部署は、地方公共団体でもできつつありますが、縦割りを根本的に解決できていないのが実情です。

 この、部局横断的な取りまとめを行う部署がどのくらい機能するかによって、縦割りの解消や自治体内のDX推進の達成度が変わってくるのではないかと思います。

5 さいごに

 官僚のニュースを見て思ったのは、こうした業務効率化やDXの話でした。私たちも暮らしのDXを進めて、より便利な社会が構築できれば、より豊かな人生が送れるかもしれませんね。ぜひとも霞が関の官僚の皆様には、DX推進の旗振りを頑張ってほしいと思います。